最近読んでいる本は、再読のものや、読んでいなかったオーソドックスな本が多い。今読んでいるのは山口定著『ファシズム』(岩波現代文庫、2006年)で、これは大学4年のときに卒業論文のため旧版で読んだ。もうかなり前のことで、そのころよくわからなかったことや読み飛ばしたところもあるし、第一覚えていないことが多すぎる。再読が多くなっている一番の理由は、何も覚えていないからで、読書に費やしたあの時間はいったい何だったのだろうと、忸怩たる思いにとらわれる。昨日読んだのは村瀬興雄著『ナチズム―ドイツ保守主義の一系譜』(中公新書、1968年)で、これは恥ずかしながら未読だったもの。なぜ今まで読まなかったのかわからないが、たぶん一番の原因は読みたいと思っているときに、古書店で安く見つけられなかったからだと思う。新書なのに。貧乏はしたくないものだ……。
mixi内の読書管理ソフトであるソーシャルライブラリーを使い始めて、いろんなところに書き付けていた新刊書や未読書の書誌情報をある程度まとめられるようになってきた。なんせ年二回の日本帰国時にそうした本のチェックや購入、図書館での借り出しを行わなきゃいけないので、情報はまとめておかねば困る。
北京に来たことによって、北京日本学研究センターの図書館を利用できるようになり、読書環境は飛躍的に向上した(といってもまだ一回しか行っていないので、恒常的に利用できるようにしなければならないのだけど)。センターの蔵書はオーソドックスな選書がなされているようで、資料的なものも多い。反面、くだけたものや風化しやすいもの、特殊なものはあまりないだろうから、その手のものは帰国時に読んだり買ったりしなければならない。その意味でも日頃からネットでの本のチェックは欠かせないのだ。
ソーシャルライブラリーで友人が登録しているものに、小川和也著『牧民の思想―大名たちの治政観』(平凡社選書、2008年)というのがあって、ぼくも興味を持ったのだけど、著者名で調べたら、『鞍馬天狗とは何者か―大佛次郎の戦中と戦後』(藤原書店、2006年)を書いた人だった。この本は前に手に取ったことはあって、そのうち読んでもいいかなと思っていた。つい最近も講談社現代新書で『大佛次郎の「大東亜戦争」』というのを出したようだ。CiNiiで調べたら、「書物・出版と社会変容」研究会の人のようであり、ちょっと気になる。
大佛次郎といえば、最近何かのサイトで見てちょっと驚いたというか、面白かったことがあって、大佛はビートルズの来日コンサートを見ているのだそうだ。三島由紀夫が見に行ったと聞いても、いかにも行きそうなイメージだけど、大佛次郎がビートルズを見に行くというのはイメージになかったので意表を突かれた。これはさきほど調べたら、結構知られていることらしい。文庫になっているビートルズ関係の本(少なくとも二冊)に、大佛が朝日新聞に書いた記事が載っているようだ。
上記の小川和也著『牧民の思想』などの情報を得ようと、平凡社のサイトを見てみた。図書目録のページで、「平凡社選書」を検索してみる。出てくるタイトルなどを見て、さすが面白そうなものを出しているなと思ったのは一瞬。最近刊行が非常に少ないのは前から知っていたが、サイトに掲載されているものの多くが品切れと表示されている。鹿島徹『埴谷雄高と存在論』も、奥武則『大衆新聞と国民国家』も、李順愛『二世の起源と「戦後思想」』も品切れなの? みんなそこそこ話題になった本だけど、厳しいなあ。前田勉著『兵学と朱子学・蘭学・国学』とか、若尾政希著『「太平記読み」の時代』とか、伊藤徹著『柳宗悦―手としての人間』(品切れ)とかは、そのうち買っておかなきゃダメかもしれん。
というか、大丈夫なのか平凡社。
一昨日、毎日新聞のサイトで「東アジア出版人会議:「100冊」を選定、翻訳出版へ」という記事を発見。貼り付けて保存しておく。
日本側が選定した26冊はだいたい読んでいたので、ちょっとほっとしたが、それこそいかにも一昔前の平凡社選書っぽいセレクトだなあ。呼びかけ人だという龍澤武が中心になって選定した印象がある。
----------------------------
東アジア出版人会議:「100冊」を選定、翻訳出版へ
毎日新聞 2009年11月19日 13時06分(最終更新 11月19日 13時36分)
http://mainichi.jp/enta/art/news/20091119k0000e040068000c.html 東アジアに読書共同体を作ろうという民間の国際プロジェクトが動き出した。編集者らが組織する「東アジア出版人会議」(金彦鍋会長)が韓国・全州市での大会で発表した「東アジアの100冊」がその第一歩。日本、中国、韓国、台湾、香港の五つの国・地域の編集者らが人文書を選び、来春にはそれぞれの国・地域で解説書を出版、その先の翻訳へとつなげる。大会の模様をリポートする。【佐藤由紀】
大会会場の国立全北大学会議場。廊下に並ぶ100冊を参加者らが代わる代わる手に取っていた。韓国語版がある『自動車の社会的費用』(宇沢弘文・岩波新書)や日本語訳が出版されている『中国歴史概要』(一橋書店)など一部を除いて、大半は自国以外で未翻訳。歴史、芸術、文学、政治、経済、社会と多彩だ。
「丸山真男はじめ日本書の翻訳は出ているが、いずれも中国の立場で選んでいる。今回の26点は日本の編集者が私たちに『ぜひ読んでほしい』と勧める客観的なリスト。概要を読むだけで今からわくわくする」
中国の出版社・三聯書店の若手編集者、舒※(火へんに偉のつくり)さん(39)が語る。
中国では四川省に拠点を持つ出版社が名乗りを上げ、来年にも10点を翻訳、10年後には「東アジアの100冊」を図書館に備えたいとの目標を掲げている。主な読者層として大学生など30代以下の青年層を想定している。「上の世代と違い若者たちは戦争や対日関係などについて柔軟な考え方をもっている。日本や韓国へ旅行したり留学する人も増えた。今回の翻訳出版が幅広い日本人著者への関心に結びつくのではないか」(舒さん)
同会議の呼びかけ人の一人で平凡社の元編集局長の龍澤武さんによると、それぞれの国・地域の編集者らが、自らの文化、歴史、思想、社会などにかかわる問題を深く掘り下げた「現代の古典」を選択したという。「東アジアには書物交流の長い歴史があるが、近代化以降は欧米の人文書の翻訳が圧倒的に多い。100冊は東アジアの読者に日本の名著を紹介するだけでなく、日本の読者の刺激にもなってほしい」と期待する。
大会では、翻訳者確保の難しさ、著作権条件のクリア、商業的に成り立つか、といった問題点が数多く指摘され、実際の翻訳出版には長い時間がかかりそうだ。その一方で「新訳出版に合わせて著者や編集者を招いてセミナーを」(韓国)、「科学書の共同出版も」(日本)、「次は文学の100冊」(台湾)など、未来志向の提案も議論された。映画や音楽など、東アジアでは若者を中心に文化交流が盛んだが、書物交流はまだまだパイプが細い。100冊プロジェクトが新たな出版の地平を切り開くかもしれない。
【ことば】東アジア出版人会議
東アジアでの書物交流をめざす編集者らの組織。龍澤武(元平凡社編集局長)、加藤敬事(元みすず書房社長)、大塚信一(元岩波書店社長)の3氏が、中国、韓国、台湾、香港の出版人に呼びかけて結成。05年秋の東京大会を皮切りに年2回の大会を開催。10月末に開いた第9回全州大会にはみすず書房、筑摩書房の編集者も参加した。
東アジアの100冊:全リスト
毎日新聞 2009年11月19日 13時06分(最終更新 11月19日 17時20分)
http://mainichi.jp/enta/art/news/20091119k0000e040069000c.html <日本>=全26点
●南北朝の動乱(佐藤進一著・中公文庫)
●講義録(丸山真男著・東大出版会)
●共同幻想論(吉本隆明著・河出書房新社)
●苦海浄土(石牟礼道子著・講談社)
●日本の古代国家(石母田正著・岩波書店)
●都市政策を考える(松下圭一著・岩波新書)
●世界の共同主観的存在構造(廣松渉著・講談社学術文庫)
●自動車の社会的費用(宇沢弘文著・岩波新書)
●文化と両義性(山口昌男著・岩波現代文庫)
●影の現象学(河合隼雄著・講談社学術文庫)
●狩猟と遊牧の世界(梅棹忠夫著・講談社学術文庫)
●無縁・公界・楽(網野善彦著・平凡社ライブラリー)
●古典の影(西郷信綱著・平凡社ライブラリー)
●万葉集抜書(佐竹昭広著・岩波現代文庫)
●戦時期日本の精神史(鶴見俊輔著・岩波現代文庫)
●精神史的考察(藤田省三著・平凡社ライブラリー)
●都市空間のなかの文学(前田愛著・筑摩学芸文庫)
●分裂病と人類(中井久夫著・東大出版会)
●意識と本質 精神的東洋を求めて(井筒俊彦著・岩波書店)
●字統(白川静著・平凡社)
●全体を見る眼と歴史家たち(二宮宏之著・平凡社ライブラリー)
●天皇の肖像(多木浩二著・岩波書店)
●自然の慈悲(伊谷純一郎著・平凡社)
●天皇の逝く国で(ノーマ・フィールド著・みすず書房)
●小さなものの諸形態 精神史覚え書(市村弘正著・筑摩書房)
●精神史(林達夫著・平凡社ライブラリー)
<中国>=全26点
●詩論(朱光潜著)
●中国建築史(梁思成著)
●中国法律と中国社会(瞿同祖著)
●中国哲学略史(馮友蘭著)
●中国文化要義(梁漱溟著)
●原儒(熊十力著)
●漢語史稿(王力著)
●魏晋玄学論稿(湯用※著)※は「丹」に「さんづくり」(「形」の右側)
●中国歴史概要(翦伯贊編)
●中国の伝統美学(李澤厚著)
●仏教と中国伝統文化(蘇淵雷著)
●簡明な中国歴史地図集(譚其驤著)
●近代中国社会の新陳代謝(陳旭麓著)
●古代を疑う時代を脱する(李学勤著)
●村落からみた文化と権力(王銘銘著)
●明清時代の士大夫研究(趙園著)
●寒柳堂集(陳寅恪著)
●談芸録(銭鍾書著)
●郷土中国(費孝通著)
●現代中国思想の興起(汪暉著)
●儀礼のなかの美術(巫鴻著)
●兵は詐を以て立つ 「孫子」を読む(李零著)
●アヘン戦争から五四運動まで(胡縄著)
●中国文学史新著(章培恒、駱玉明著)
●中国政治経済史論 1949-1976(胡鞍鋼著)
●東亜儒学九論(陳来著)
<台湾>=全15点
●政道と治道(牟宗三著)
●中国文化の展望(殷海光著)
●中国芸術の精神(徐復観著)
●日據下における台湾の政治社会運動史(葉栄鍾著)
●中国人の性格 総合学際的検討(李亦園、楊国枢編)
●中華民族の花果零落れを説く(唐君毅著)
●歴史と思想(余英時著)
●中国哲学の精神とその発展(方東美著)
●中国の青銅器時代(張光直著)
●思想と人物(林毓生著)
●万暦十五年(黄仁宇著)
●幽暗意識と民主伝統(張※著)※はさんずいに「景」に「頁」
●現代精神と儒家伝統(杜維明著)
●台湾歴史図説(周婉窈著)
●世紀にまたがる風采と文才 現代小説二十家(王徳威著)
<香港>=全7点
●中国歴代政治の得失(銭穆著)
●自由と人権(張佛泉著)
●香港と中西文化の交流(羅香林著)
●黄土と中国農業の起源(何炳棣著)
●中国現代小説史(夏志清著)
●中国の古代服飾の研究(沈従文著)
●新・中国文明起源の探求(蘇秉※著)※は王へんに「奇」
<韓国>=全26点
●白凡逸志(金九著)
●意味から見た韓国の歴史(咸錫憲著)
●韓国医学史(金斗鐘著)
●韓国科学史(全相運著)
●韓国音楽史(張師※著)※は「員」へんに「力」
●韓国近代文芸批評史研究(金允植著)
●韓国数学史 数学の窓から見た韓国人の思想と文化(金容雲・金容局著)
●知訥の禅思想(吉熙星著)
●韓国儒学思想論(尹絲淳著)
●韓国社会史研究 農業技術の発達と社会変動(李泰鎮著)
●ガリレアのイエス イエスの民衆運動(安炳茂著)
●韓国戦争の勃発と起源(朴明林著)
●韓国の労働運動と国家(崔章集著)
●風流徒と韓国の宗教思想(柳東植著)
●揺れる分断体制(白楽晴著)
●韓国史新論(李基白著)
●古画鑑賞の楽しさ(呉柱錫著)
●時間との競争 東アジア近現代史論集(閔斗基著)
●戦争と社会 私たちに韓国戦争は何だったのか(金東椿著)
●韓国文学史の論理と体系(林※澤著)※は「螢」の「虫」部分が「火」
●韓国美術の歴史(金元龍・安輝濬著)
●運化と近代(朴熙秉著)
●韓国人の神話(金烈圭著)
●韓国文学通史(趙東一著)
●眼と精神 韓国現代美術理論(金福栄著)
●風景と心(金禹昌著)
最近のコメント